多くのゴルファーが誤解している「戦略」という言葉の罠
ゴルフをプレイする中で、「今日の戦略はどうする?」「どういう戦略でコースを攻めるか」といった言葉をよく耳にします。しかし、佐久間氏が提唱する「Sメソッドゴルフ」では、この「戦略」という言葉を曖昧に使いすぎることが、かえってゴルフを複雑にし、スコアメイクを妨げているのではないかと指摘しています。
そもそも、あなたにとってゴルフの「戦略」とは何でしょうか? ある人はそれを「コースの攻め方」と捉え、またある人は「目標スコアに向けた作戦」と考えます。このように、100人のゴルファーがいれば100通りの「戦略」の受け取り方があり、その定義は一様ではありません。
特に100切り選手権やベストスコア更新を目指すアマチュアゴルファーが、大げさな「戦略」を立てようとしても、具体的なスイング技術が伴っていなければ機能しません。現場で何をすべきか見えないまま、結局は「えいやっ」と力任せにボールを打って失敗してしまうケースが多々あります。 ゴルフにおける本当の「戦略」と、現場で必要とされる「戦術(作戦)」の違いを整理し、スコアを劇的にまとめるための正しいインサイドワーク(脳内での意思決定)を理解することが上達への近道です。
「戦略」と「戦術(作戦)」の決定的な違いとは?
ゴルフをシンプルに組み立てるためには、言葉の定義を整理し、自分が今どちらについて考えているのかを明確に区別する必要があります。
1. 戦略(長期的・全体的な計画)
本来、戦略とは長期的かつ全体的な枠組みを指す言葉です。 ゴルフにおける本質的な「戦略」には、以下のようなものが該当します。
- 長期的な目標(ゴルフライフの戦略):「3年後にクラブチャンピオンになる」「プロテストに合格する」「将来アメリカのツアーで活躍する」といった、未来に向けたロードマップ。
- 内部的な戦略(実験と検証):「新しく買ってきたクラブのスピン性能をコースで試す」「新しく習ったスイングが本当に通用するか実験する」「久しぶりのラウンドで、上達した自分の姿を同伴競技者に認めさせる」といった、個人の心の中に秘められた目的。
- ラウンド全体の大きな方針:その日の体調や自分の技術レベルを踏まえ、「今日はボギーペースを基本としてダブルボギーを避け、99で回る」といった18ホール全体を通じた目標設定。
2. 戦術・作戦(現場での具体的な方法)
一方で、私たちが実際にコースの各ホールに立ち、1打ごとに決断する内容は、すべて「戦術」や「作戦」に分類されます。
- 「このホールは池があるから、ハザードに入れないために左側の安全なエリアに運ぼう」
- 「ラフに入ってしまったから、無理にウッドを使ってチョロするより、8番アイアンで確実にフェアウェイに戻そう」
- 「右側が崖になっているから、短めのクラブを選択して安全に手前から攻めよう」
これらは1打1打、あるいは1ホールごとの極めて具体的で現場主義的な意思決定であり、「戦術の集まり」です。 ミサイルや飛行機といった武器(ゴルフで言えば、その状況を切り抜けるためのスイング技術)を持たないまま「空軍を使った戦略」を机の上で立てても機能しないように、目の前の状況を処理する「具体的な技術(戦術)」がなければ、どれだけ立派な戦略を立てても意味がありません。
100切り・ベスト切りに必要なのは「大げさな戦略」より「目の前の戦術」
100切り選手権を終えた後、目標を達成できなかった多くのプレイヤーと佐久間氏が対話を重ねる中で見えてきたのは「戦略」という言葉に惑わされてゴルフを難しく考えすぎているという事実でした。
100以上打ってしまう人が100を切るために本当に必要なのは、かっこいい戦略ではなく、一球一球をいかに大叩きせずに打つかという「具体的な戦術」の積み重ねです。 特別な戦略は立てておらず「目の前のボールを一生懸命に打ち、後から数字を足し算したら100が切れていた」というプレイヤーが多いのは、余計な思考に囚われず、目の前の具体的な作戦(戦術)だけに集中できたからです。
もし、いつでも完璧なナイスショットが打てて、思い通りにピンに絡むような高い技術を持っているのであれば、そもそもゴルフに戦略など必要ありません。 アマチュアゴルファーが考えなければならないのは、ナイスショットを打つことではなく「トラブルになった時」に、自分が持っている技術の引き出し(戦術)を使って、いかに大叩きを防ぐかというシンプルな現場の判断なのです。
求めるスコアによって戦略は全く異なる
プレイヤーが目指すスコアによって、採用すべき戦略やコースの攻め方は変わります。
90台や100切りを目指す場合(ボギーペースの戦略)
このレベルの目標であれば、コースの総距離が長くても、それほど大きな問題にはなりません。 なぜなら、すべてのホールをボギー(または一部ダブルボギー)で回ることができれば、確実に目標を達成できるからです。
- パー4であれば、最初から無理に2オンを狙う必要はありません。3オンさせて2パットのボギーで上がる「3オンボギーペース」の作戦をあらかじめ徹底します。
- パッティングでも、無理に1パットを狙って大きくオーバーさせ、返しを外して大叩きするリスクを避け、確実に2パットで収めることを優先します。
60代のアンダーパーを目指す場合(バーディを狙う戦略)
しかし、アンダーパーや60代でのエージシュートを目指すプロや上級者の場合、戦略は攻めの一手へと変わります。 特にパー5は「確実に2オンを狙うか、仕留めてバーディやイーグルを奪いにいくチャンスホール」となります。 4つあるパー5で確実にスコアの貯金を作り、他のタフなホールをパープレーで耐えるという明確な戦略が成り立つのです。
自分の現在の実力と目標とするスコアを天秤にかけ「今の自分に現実的に何が可能なのか」を客観的に見極めることこそが、正しいインサイドワーク(脳内での判断)の第一歩です。
究極のリスク管理:リミットフェンス(危険エリア)を避ける
ゴルフ場には必ず、池やバンカー、崖、OBといった「絶対にボールを入れてはいけない危険なエリア」が存在します。 Sメソッドでは、これらの最悪の場所を「リミットフェンス」と定義し、ここを徹底的に避ける作戦を徹底します。
例えば、最終ホールで「ダブルボギーで上がれば100切り達成」という状況になったとします。 ここで多くのゴルファーは、わざわざリスクの高いドライバーを手にしてOBを打ち、大叩きして自滅してしまいます。
- 「ドライバーを打たなくても、アイアンで刻めばトリプルボギーすら叩かない」
- 「左に崖があるからフェースを少し左に向けて、右の安全な広いスペースを狙う」
このような、最悪の事態を排除する決定を下すのは、技術ではなく頭(インサイドワーク)の役割です。 後から「あの時、あそこに打っておけば、楽にボギーで上がれたのに」と後付けで言っても意味がありません。打つ前に一呼吸置き、自分の実力と状況を冷静に観察して、最も安全なルートを選択する判断プロセスが、スコアメイクを強力に支えます。
まとめ:頭で考えて打つプロセスを大切に
ゴルフの戦略について深掘りしていくと、それは単なる「ホールの攻め方」という狭い話ではなく、プレイヤーのゴルフ人生や、その日の体調、自分の技術レベルを受け入れるという、非常に深い精神的な領域に繋がっていることが分かります。
大切なのは、「戦略」というかっこいい言葉に踊らされて、具体性のないままなんとなく打ってしまうのをやめることです。 コースに出たら、
- まず現場の状況(風、ライ、ハザード)をしっかりと観察する。
- 自分が絶対に避けるべきリミットフェンスを確認する。
- 自分の実力で確実に実行できる戦術(作戦)を選択する。
この「打つ前に少し頭で考えてから実行する」という極めてシンプルなプロセスの繰り返しこそが、大叩きをなくし、100切りやベストスコア更新を現実のものにするSメソッド流のインサイドワークの本質なのです。次のラウンドでは、ぜひ目の前の1打に対する具体的な「作戦」を立ててプレイしてみてください。



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