ゴルフにおいて「上手い人」と「そうでない人」の境界線はどこにあるのでしょうか。100を切っていれば上手いと考える人もいれば、常にパープレー(72)を基準にしている人もいます。

佐久間氏が提唱するSメソッドでは、常にパープレー(72)を基準にラウンドできる人と、どうしても90前後を打ってしまう人との間には、プレースタイルにおいて「決定的な違い」があると指摘しています。

本記事では、スコアを分ける最大の要因である「ミドルゲーム」という概念を中心に、コース設計の違いからマネジメントの極意まで、動画内で語られたパープレーヤーの思考法を解説します。

ショットを3つに分類する:「ミドルゲーム」とは何か?

ゴルフのラウンド中、プレイヤーは様々な距離からショットを打ちますが、Sメソッドではグリーンに到達するまでのショットを大きく3つのカテゴリーに分けて考えます。ここを理解することが、スコアメイクの第一歩となります。

1. ロングゲーム

ティーショットから始まり、グリーンを狙って打つショットのことです。例えばパー4であれば、通常はドライバーでの1打目と、アイアンやユーティリティでグリーンを狙う2打目の「計2回」がロングゲームに該当します。

2. ショートゲーム

グリーン周りからのアプローチや、パッティングのことです。Sメソッドにおけるショートゲームの定義は厳密で「グリーンのカラーから5ヤード以内」や「ガードバンカー」など、グリーンのすぐ近くからのショットのみを指します。

3. ミドルゲーム(ここがスコアの分かれ道)

パープレーヤーと90を打つ人を分ける最大の要因が、このミドルゲームです。 ミドルゲームとは、グリーン周り(ショートゲーム)までは行かなかったものの、50〜60ヤード、あるいは80ヤードといった中途半端な距離からウェッジでコントロールして打つショットのことを指します。

90を打つゴルファーの典型的なパターン

90を打ってしまう(ボギーペースになる)ゴルファーのパー4でのプレーを分解すると、以下のような内訳になります。

  • ロングゲーム:2回(ティーショット、セカンドショット)
  • ミドルゲーム:1回(セカンドで乗らず、50〜60ヤードが残る)
  • ショートゲーム:1回〜2回(そこから寄せてパット)

ロングゲームで大きなミス(ダフリ、トップ、林に入れるなど)をしてしまうため、グリーン周りまでボールを運ぶことができず、第3打目で50〜60ヤードの「ミドルゲーム」を余儀なくされます。そこからグリーンに乗せて2パットで上がればボギー(これが90ペース)になりますが、もしこのミドルゲームでミスをしてグリーンに乗らなかった場合、4オンになりダブルボギーを叩いてしまいます。ダブルボギーが出始めると、スコアはあっという間に100前後に落ち込んでしまいます。

パープレーヤーは、なぜミドルゲームをやらないのか?

一方、常にパープレー(72)を基準に回っている上級者やプロゴルファーはそもそも「ミドルゲーム」をやっていません。

パー4であれば、ロングゲーム2回で確実にグリーンに乗せるか、外したとしてもグリーンのすぐ近く(ショートゲームのエリア)までボールを運びます。そのため、50〜60ヤードのミドルゲームを打つ機会が圧倒的に少ないのです。

ミドルゲームはプロでも寄せるのが難しい

多くのアマチュアは「50〜60ヤードの距離をもっと練習して、ピタッと寄せてワンパットでパーを拾えるようになればスコアが良くなる」と考えがちです。

しかし佐久間氏は「50〜60ヤードのミドルゲームから寄せてワンパットで上がることは、プロであっても非常に困難である」と語ります。 なぜなら、50ヤードのコントロールショットはフルスイングではないため、ボールに十分なバックスピンがかかりません。グリーンに落ちてからどう跳ねて、どれくらい転がるかを正確に計算することは不可能に近いため、毎回ピンに寄せるのは現実的ではないのです。

「ミドルゲームの技術を磨けば上手くなるかもしれないが、それには限界がある」というのがSメソッドの考え方です。ミドルゲームを練習するよりも「そもそもミドルゲームが残らないようにロングゲームの精度を上げる(大きなミスをしない)」ことが、パープレーヤーへの道なのです。

トーナメント中継のカメラマンが教える真実

この「ミドルゲームをやらない」という事実は、プロのトーナメント中継を見るとよく分かります。 テレビ中継では、ティーグラウンドの次にカメラマンが待機しているのは、選手がティーショットを打ち終えた「セカンド地点」です。そして次はグリーン周りです。

しかし、もし90を打つアマチュアの試合を中継しようとすれば、セカンドショットで大きなミスをして少ししか飛ばないため、カメラマンはマイクを持って選手と一緒にフェアウェイを走り、サード地点(ミドルゲームの場所)まで追いかけなければならなくなってしまいます。

コース設計から見るミドルゲーム:ターゲット型とリゾート型

ゴルフ場の設計(レイアウト)という観点から見ても、ミドルゲームの存在意義がよく分かります。ゴルフ場には大きく分けて「ターゲット型」と「リゾート型」の2種類あります。

ターゲット型のコース(ミドルゲームが許されない)

アメリカのアリゾナ州などにあるターゲット型コースは、ティーグラウンドの前からフェアウェイが広がっているわけではありません。ティーグラウンドから180〜200ヤード先までは全て「サボテン畑(砂漠)」になっており、そこを越えなければフェアウェイという安全な場所(ターゲット)に到達できません。そこからグリーンまでの間も同じようにサボテン畑が広がっています。

このようなコースでは、チョロやダフリといったミスをしてミドルゲームを残してしまうと、ボールはサボテンの中に落ちてしまい、打ち直すかペナルティを払うしかありません。「ミドルゲームをする場所がない(許されていない)」のです。ターゲット型コースは、正しいロングゲームができるスクラッチプレイヤーでなければ楽しむことができません。

リゾート型のコース(ミドルゲームが許されている)

一方、日本に多い一般的なゴルフ場は「リゾート型」に分類されます。ティーグラウンドのすぐ前からフェアウェイが綺麗に刈り込まれており、グリーンまでずっと繋がっています。 初心者がトップやダフリを繰り返して50ヤードずつしか進まなくても、ボールはフェアウェイにあるため、何度でもミドルゲームを打つことができます。 つまり、アベレージゴルファーが90や100で回れるのは、コース設計自体が「ミドルゲームを許容してくれているから」に過ぎないのです。

パー5はリカバーが効くチャンスホール

初心者は、一発当たればパーオンできるパー3を好む傾向があります。しかし上級者にとってパー3は、少しのミスが直接ボギーに繋がる非常に神経を使うホールです。

逆にパー5は、上級者にとってチャンスホールとなります。パー5はロングゲームの回数が増えますが、その分リカバーが効くからです。ドライバーとウッドでグリーン近くまで運べば、ミドルゲームをスキップしてショートゲームに持ち込むことができ、バーディやパーを容易に計算できるようになります。

ミドルゲームを残さないためのコースマネジメント

では、ミドルゲームをやらないためには具体的にどうすれば良いのでしょうか。

現代のゴルフでは、レーザー距離計などで「ピンまで残り128ヤード」といった正確な数字を知ることができます。しかし、その数字だけを見て「130ヤードだから7番アイアンだ」と安易にクラブを選ぶと、少しでもダフったり噛んだりした時に、手前のバンカーに入ったり、50ヤードのミドルゲームが残ってしまいます。

Sメソッドのマネジメントでは「最悪のミスをした時でもミドルゲームが残らない選択」をします。 例えば、距離は届く番手であっても、手前に深いバンカーや池などの危険がある場合は、あえてユーティリティなどの長いクラブを持ち、フェースを開いて軽く打ちます。そうすれば、仮にミスヒットしてもボールはグリーン周り(ショートゲームエリア)まで飛ぶため、ミドルゲームを回避できるのです。

もしAIキャディがいて「このクラブでミスをしたら、スコアは6や7になりますよ」と教えてくれたら、誰もがクラブ選択を考え直すはずです。打つ前にそのシミュレーションを自分で行うことが重要です。

ミドルゲームが残ってしまった場合の鉄則

どれだけ気をつけても、ロングゲームでミスをして50〜60ヤードのミドルゲームが残ってしまうことはあります。 その時に絶対にやってはいけないのが「挽回しようとしてピンにピタッと寄せてパーを狙うこと」です。

前述の通り、50ヤードから寄せるのは至難の業です。ここで無理をしてショートしたり、バンカーに入れたりすれば、ダブルボギーになってしまいます。 ミドルゲームが残ってしまった(パーオンに失敗した)時点で、「ここはパーを諦め、確実にグリーンに乗せて2パットのボギーで上がる」とマイパーの設定を切り替えるのがディフェンスの鉄則です。

まとめ:ダボを捨ててパープレーの基準を知る

90が基準になってしまう人は、ロングゲームでのミスをミドルゲームで補おうとし、そこでさらにミスを重ねてダブルボギーを打っています。 一方、パープレーを基準にできる人は、そもそもリスクの高いミドルゲームをやらない(残さない)マネジメントを徹底し、ロングゲームとショートゲームだけでゴルフを組み立てています。

「ダボを捨てる」ことは、すなわち「無謀なミドルゲームをやめる」ことと同義です。 距離計測器の数字だけを見て機械的に打つのではなく、ミスした時にどこにボールが行くかを想定し、ミドルゲームをやらなくて済むクラブ選択とコースマネジメントを取り入れてください。その思考の転換が、あなたをパープレーヤーに引き上げてくれるはずです。